交通事故を減らすために~交通心理学のすすめ~

事務局Hです。

弊所では多くの交通事故案件を取り扱っています。

事故により重大な後遺障害が残った方や、死亡事故のご遺族の方のお話を伺うと、なぜそのような悲惨な事故が起こってしまったのかと非常に胸が痛みます。

交通事故の大半はヒューマンエラーが原因です。

では、なぜヒューマンエラーはなくならないのでしょうか?

交通事故が起こる原因を心理学的に解明しようとする「交通心理学」という学問があります。

交通心理学を学ぶことで、どうすればヒューマンエラーを減らし、1件でも多くの交通事故をなくすことができるか知ることができます。

今回はその一部をご紹介したいと思います。

交通心理学ではよく使われる概念に、「リスクテイキング」があります。

リスクテイキングとは、リスクを承知で危険な行動をとるドライバーの傾向のことです。

たとえば、「一時停止の標識があるのはわかっていたが、急いでいたので完全停止せず交差点に進入した」という経験がある方は少なからずいらっしゃるのでしょうか。

これはリスクテイキングの一種です。

人がリスクテイキング行動を取るのは、それによって得られる利得(「リスク効用」)があるからです。

上に挙げた例で言えば、「ストレス発散」、「先急ぎ」がリスク効用です。

交通事故を減らすためには、リスク効用の効果を減らし、リスク回避行動の効用を増大することが効果的だと言われています。

たとえば、スピード超過をしたり、一時停止を無視するといったリスクテイキング行動の背後には、「目的地に早くたどり着ける」というリスク効用があります。

では、信号機の動きを調整することで、時速60キロの安定した速度で走り同時に続ければ赤信号に捕まることなくスムーズに走行できるようにしたらどうなるでしょうか?

「先急ぎ」のためにスピード超過をしてもどうせ赤信号に捕まってしまうので、リスク効用の効果は減少します。

時速60キロで走り続ければスムーズに目的地にたどり着くことができ、ガソリンの消費も抑えることができるので、リスク回避行動の効用が増大します。

結果的に交通事故のリスクを減らすことができます。

交通事故をなくすために、一人一人が安全運転の意識を強く持つことはもちろん重要です。

同時に、交通事故が発生する心理学的な要因を明らかにし、交通事故を減らせる社会的な仕組みを取り入れることも必要でしょう。

交通心理学にご関心のある方は、『交通心理学入門』(日本交通心理学会)を是非お読みください。

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